前回のコラムでお伝えしました通り、ジョホール州南部ヌサジャヤ地区に建設中の「ヌサジャヤ・テックパーク」が現在注目を浴びています。 テックパーク成功の鍵を握る立地的好条件のひとつとして、「Tanjung Pelepas港(PTP)への近さ」を挙げましたが、 今回はこの「PTP」について詳しくご紹介したいと思います。
【 PTPの歴史 】
シンガポールはユーラシア大陸の最南端に位置し、交易史上地理的に重要な位置を占めていました。
7世紀頃にはすでに様々な国の船が寄港していたという記述もあるようです。
16世紀頃に一旦衰退の道を辿るものの、1819年にイギリスの植民地となり再度繁栄することになります。
1923年のコーズウェイの建設完了に伴い、ジョホール海峡の船舶通過が不可能となります。これにより、シンガポール港の重要性は増したと言えるでしょう。
戦後シンガポールの独立によって、この地政学的に重要な拠点での停泊についてはシンガポールがほぼ唯一の選択肢となり、
現在でもシンガポールは香港と並ぶ世界最大級の貿易港の1つとなっています。
こうしたシンガポール港の繁栄の中で、PTP建設を促したのが「第7次マレーシア計画」(1996~2000年)です。
この計画の中で「シンガポールに寄港する船をマレーシアに呼び込む」ことがうたわれ、現在に至ります。
【 PTPのメリット 】
マレーシアの物価の安さを考えると、港の使用料金や水・燃料等の補給の面からも、圧倒的にPTPの方がシンガポール港と比べ競争力が高い言えるでしょう。
少々古い情報では、シンガポール港よりも30%安いとの記述もありました。
また、このPTP内には「自由貿易区域」が設けられているということも大きな魅力のひとつです。
自由貿易区域とは、一般的に「外国から輸入した貨物を、通関手続きを経ることなく保管し、加工・製造・展示等を行うことができる一定の区域を指し、
貿易や外国企業の誘致を促進するために国が指定する。この域内に立地する企業は税制上の優遇措置などを受けることができる」というものです。
2006年(最新データ)の時点で、すでに38社が入居、1万人以上の雇用を創出していました。
企業にとって免税は最大のメリットですから、多くの企業が注目するのも納得できるかと思います。
地理的にも、PTPの完成までは、ジョホールの港といえば東側のPasir Gudangだけでした。
つまり、マレー半島西部(=インド洋方面)からの船にとっては、シンガポール港が1番近かった、ということになります。
それがPTPの開港により、ジョホールの東西両サイドに船を停められることになり、選択肢が広がったのです。
他交通機関との接続面でも、下記の通りPTPは非常に有利な立地となります。
●ジョホールバル・セナイ空港(航空貨物のハブ):25分
●シンガポール・チャンギ空港(東南アジアのハブ空港):45分
●マレーシアの主要高速道路ネットワーク:5.4km
●鉄道貨物との連絡:PTPまでマレーシア国鉄の貨物線が乗り入れ(PTP⇔タイ南部)
→ヤンゴン(ミャンマー)、ラオス、プノンペン(カンボジア)、ダナン(ベトナム)、昆明(中国)
との国際鉄道ネットワークも構想あり。
さらには、後発であるが故の施設の新しさもメリットと言えそうです。
こうしたメリットからでしょうか、世界のトップ20に挙げられる主要海運会社の多くで、積み替え港をシンガポールからPTPへ移す動きが見られています。
海運のマースクは全面的に積み替え港をシンガポールからPTPに移しています。
また、エバーグリーンについては取扱量の8割をシンガポールからPTPに移していますし、MSC、K-LineなどもPTPでの営業を始めています。
この結果、PTPはコンテナ取扱量において世界のトップ20に入るレベル(マレーシアに限定すれば1位)にまで競争力を上げているのです。
こうしたテックパークの立地とPTPの利点を踏まえ、今後多くの企業がテックパークを目指すことになるのではないでしょうか。
【 テックパーク開発とMedini地区の優位性 】
先に触れましたように、PTPだけでも既に1万人の雇用を創出しています。
これは、毎朝シンガポールに向かう途中、並走していた車やバイクの半分近くがPTPへの最寄インターで降りていくことからも実感の沸くところです。
その点で、テックパークから車で5分程度の位置にある「メディニ地区」への入居者はますます増えることになると予想できるでしょう。
もともとヌサジャヤ地区には大型の開発が集中しています。
その中でもメディニ地区は、私達外国人にとって、他の地区に比べて物件購入の垣根の低い地域です。
本年5月1日には、外国人が不動産を購入する際の金額が現在のおよそ1,500万円(50万RM)から3,000万円(100万RM)に引上げられますが、
メディニ地区はこの変更すら対象外となる特別な地域でもあるのです。
これらを考察すると、今後のジョホールバル不動産投資においては、メディニ地区の物件は手頃な価格で購入でき、
インカムゲイン・キャピタルゲインが同時に狙える注目のエリアであると考えられます。
ぜひ、皆様の今後の投資のご参考になれば幸いです。
では次回もお楽しみに。